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干し芋といえば茨城県、というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。ところが、干し芋の発祥は茨城県ではなく、静岡県だといわれています。では、どのようにして茨城県が干し芋の一大産地になったのでしょうか。
この記事では、農林水産省の「うちの郷土料理」と「にっぽん伝統食図鑑」の情報をもとに、干し芋が静岡県で生まれ、茨城県で広まっていった歴史を3つの段階で紹介します。あわせて、主な産地や作り方、文化庁の「100年フード」認定についてもまとめました。
干し芋はどんな食べもの?
さつまいもを蒸して干した保存食
農林水産省の「うちの郷土料理」では、干し芋(干しいも)は老若男女から親しまれているさつまいもの加工品と紹介されています。さつまいもを蒸して薄く切り、外に干して乾燥させたもので、素朴な甘さとほっくりとした食感が子どもたちからも好まれる、と書かれています。
冬に作られ、1年中食べられる
同じページでは、海から吹く強い風を利用して干す作業が行われるため、主な出荷時期は11月から3月中旬までが一般的と紹介されています。ただし保存食なので、1年を通して食べられているそうです。
かつては家庭でもよく作られ、軒先にさつまいもを干している様子は冬の風物詩だった、とも書かれています。
干し芋が広まった歴史3つの段階
農林水産省の情報をもとに、干し芋が静岡県で生まれ、茨城県で広まるまでの歴史を3つの段階に分けて紹介します。
1. 静岡県で干し芋が生まれる
農林水産省の「うちの郷土料理」では、干し芋の発祥の地は静岡県と紹介されています。遭難した薩摩(いまの鹿児島県)の船を、遠江国(いまの静岡県)の村役人だった大澤権右衛門(おおさわごんえもん)が助けたことをきっかけに、静岡県にさつまいもがもたらされたといわれています。
静岡県でさつまいもの栽培が広がる中で、栗林庄蔵という人が、さつまいもを煮て包丁で薄く切ったものを干す「煮切り干し法」という方法を考えつき、これが干し芋のはじまりになったといわれています。いつでも食べられる、保存がきくといった便利さから、一気に関東まで広まっていったそうです。
2. 照沼勘太郎が茨城県で作りはじめる
同じページでは、その後、静岡県沖で遭難した照沼勘太郎が、静岡県で目にした干し芋を茨城県で作りはじめたと紹介されています。
遭難をきっかけにさつまいもが静岡県に伝わり、また別の遭難をきっかけに干し芋が茨城県に伝わったというのは、なんとも不思議な縁ですね。海の事故という思いがけない出来事が、ふたつの土地の食文化をつないだことになります。静岡県で生まれた作り方が、茨城県の土地や気候と出会ったことで、のちの一大産地につながっていったと考えると、歴史の流れのおもしろさを感じます。
3. 那珂湊のせんべい屋が製造・販売を広げる
農林水産省の「うちの郷土料理」では、那珂湊市(いまのひたちなか市)でせんべい屋を営んでいた湯浅藤七や小池吉兵衛が干し芋の製造・販売をはじめたことによって、一気に生産量が増えたといわれていると紹介されています。
阿字ヶ浦(あじがうら)の堀出神社には、干し芋を広めた人物として吉兵衛の胸像があるそうです。
「にっぽん伝統食図鑑」では、2019年には「ホシイモノ(欲しいもの)」がすべて手に入りますように、という思いを込めて、堀出神社の境内に新たに「ほしいも神社」が建立されたことも紹介されています。干し芋の歴史にちなんだ神社として、訪ねてみるのも楽しそうですね。
| 段階 | 場所 | できごと |
|---|---|---|
| 1 | 静岡県 | 大澤権右衛門のもとにさつまいもが伝わり、栗林庄蔵が煮切り干し法を考えつく |
| 2 | 茨城県 | 静岡県沖で遭難した照沼勘太郎が、静岡で見た干し芋を茨城で作りはじめる |
| 3 | 那珂湊(いまのひたちなか市) | せんべい屋の湯浅藤七や小池吉兵衛が製造・販売をはじめ、生産量が増える |
戦争で一時ストップし、戦後に復活
同じページでは、戦争をきっかけにさつまいもが主食にとってかわったことで、一時期、干し芋の生産は実質的にストップしたが、戦後、県の推奨もあって干し芋の生産が復活した、とも紹介されています。
主な産地はひたちなか市・東海村・那珂市
茨城県は干し芋のシェアが全国トップ
農林水産省の「うちの郷土料理」では、茨城県は干し芋のシェアが全国トップを誇り、そのうちの大部分を生産しているのが、ひたちなか市、東海村、那珂市だと紹介されています。
干し芋づくりに向いた土地
農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」では、この地域が干し芋づくりに向いている理由として、火山灰由来の水はけのよい土壌、寒暖差、ミネラルを含む潮風、そして冬の長い晴天などが挙げられています。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 土 | 火山灰由来の水はけのよい土壌 |
| 気温 | 寒暖差がある |
| 風 | ミネラルを含む潮風 |
| 天気 | 冬に晴れの日が長く続く |
生産者の取り組み
農林水産省の「うちの郷土料理」では、干し芋の生産農家などによる「ひたちなか・東海・那珂ほしいも協議会」が発足し、干し芋の普及に努めていると紹介されています。「にっぽん伝統食図鑑」によると、この協議会は「ほしいも三ツ星生産運動」や「ほしいも品評会」を展開しているそうです。
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| ほしいも三ツ星生産運動 | 衛生加工の実施などにより、安心で安全な干し芋の生産を推進する取り組み |
| ほしいも品評会 | 生産者の技術向上や、干し芋を多くの人に味わってもらうことを目的に毎年開催 |
100年フードに認定
農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」では、干し芋が、文化庁の「100年フード」の近代部門に、令和3年度(2021年度)に認定されたことが紹介されています。100年フードは、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を、文化庁が認定する取り組みです。
家庭で作られ、給食や作業体験でも親しまれている干し芋は、これからも受け継いでいきたい地域の食文化なのですね。
干し芋の作り方
蒸して、むいて、切って、干す
農林水産省の「うちの郷土料理」では、茨城キリスト教大学の渡辺敦子教授が提供したレシピとして、干し芋の作り方が紹介されています。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1 | さつまいもを皮付きのまま柔らかくなるまで蒸す |
| 2 | 熱いうちに皮をむく。アクのある部分を取り除くため皮は厚くむき、上下も厚めに切る |
| 3 | 縦に1cm幅に切る。柔らかいうちに繊維に沿ってピアノ線や釣り糸(絹糸でも可)を使うときれいに切れる |
| 4 | ざるに重ならないように並べ、風通しのよいところで1週間天日に干す。ざるからはがれるようになったら裏返して両面を干す |
材料は、さつまいも適量(3本・750g)とされています。
家庭でも作られている
同じページでは、蒸して、切って、干すだけなので、いまでも家庭で作られていると紹介されています。学校給食で干し芋を使った料理が出されたり、干し芋の作業体験が行われたりもしているそうです。
形はいろいろ
「にっぽん伝統食図鑑」では、干し芋は蒸したさつまいもの皮をむいて、カットしたものを乾燥させて作るシンプルな加工法だが、ごまかしがきかず、素材の品質や加工技術が味に現れやすいと紹介されています。砂糖や添加物は使っていないそうです。
| 形 | 内容 |
|---|---|
| 丸干し | 小ぶりなさつまいもを丸ごと干す |
| 平干し | 薄くスライスして干す |
| 角切り | スティックタイプ |
干し芋の食べ方
そのままでも、アレンジしても
農林水産省の「うちの郷土料理」では、干し芋はそのまま食べても満足感を得られるが、かき揚げにしたり、パウンドケーキやシフォンケーキの生地の中に入れたりと、アレンジも豊富だと紹介されています。
「にっぽん伝統食図鑑」では、トースターなどで軽くあぶったり、バターで炒めたりする食べ方も紹介されています。
干し芋のバター醤油炒め
「にっぽん伝統食図鑑」では、アレンジレシピとして「干し芋のバター醤油炒め」が紹介されています。
| 材料 | 分量 |
|---|---|
| 干し芋 | 2枚 |
| バター | 10g |
| しょうゆ | 小さじ1 |
作り方は、干し芋を食べやすい大きさに切り、フライパンにバターを溶かして干し芋を炒め、仕上げにしょうゆをまわしかけて器に盛るだけ。バターの香りとしょうゆの香ばしさが、干し芋の甘さを引き立ててくれそうです。
いまは品種や商品もいろいろ
「うちの郷土料理」では、干し芋に使われるいもの品種や商品もバラエティ豊かになり、日常用から高級な贈答用まで選択肢が広がっていることも、継承の後押しになっていると考えられる、と紹介されています。
干し芋でよくある質問
干し芋の発祥は茨城県ではないの?
農林水産省の「うちの郷土料理」では、干し芋の発祥の地は静岡県と紹介されています。茨城県は、静岡県から伝わった干し芋づくりが広まり、全国トップのシェアを誇る産地になりました。
干し芋の旬はいつ?
主な出荷時期は11月から3月中旬までが一般的とされています。新しく作られた干し芋を味わいたいなら、冬から春先にかけてが楽しみな時期ですね。海から吹く強い風を利用して干すため、この時期に作業が行われると農林水産省のページで紹介されています。
丸干しと平干しはどう違う?
「にっぽん伝統食図鑑」では、丸干しは小ぶりなさつまいもを丸ごと干したもの、平干しは薄くスライスして干したものと紹介されています。丸干しは厚みがあるぶん、ひとつを食べごたえのある大きさで楽しめます。平干しは薄く切ってあるので、少しずつ食べたいときにも向いていますね。好みや食べる場面に合わせて選んでみてください。
ほしいも神社はどこにある?
「にっぽん伝統食図鑑」によると、ほしいも神社は、ひたちなか市阿字ヶ浦の堀出神社の境内に、2019年に建立されました。干し芋を広めた小池吉兵衛の胸像もある神社なので、干し芋の歴史をたどる旅の目的地にもなりそうです。
家で作るときのコツは?
農林水産省のレシピでは、皮を厚めにむくこと、柔らかいうちに繊維に沿って切ること、重ならないように並べて風通しのよいところで干すことがポイントとして紹介されています。
干し芋の発祥と歴史を知ってもっとおいしく
干し芋の発祥と歴史について、もう一度まとめておきます。
- 干し芋の発祥は静岡県で、栗林庄蔵が考えた煮切り干し法がはじまりといわれる
- 照沼勘太郎が静岡県で見た干し芋を茨城県で作りはじめた
- 那珂湊のせんべい屋、湯浅藤七や小池吉兵衛が製造・販売をはじめ、生産量が増えた
- 茨城県は干し芋のシェアが全国トップで、ひたちなか市・東海村・那珂市が大部分を生産
- 文化庁の100年フード近代部門に、令和3年度に認定された
静岡県で生まれ、茨城県で育った干し芋。そんな歴史を思い浮かべながら食べると、いつもの干し芋がもっと味わい深く感じられそうです。